田んぼが染まる頃

田んぼが染まる頃

第一話 田んぼが茶色の頃~セピアとオリーブ~

「結局、私、鷹の台に行くわ」  合格発表で私――杉田葵が掲示板の前に立ち尽くしたあの日から、早くも二十日が経とうとしていた。  受話器の先で、友人の残念そうな声が聞こえてくる。 「そっか……。高瀬高校ダメだったんだね……。」  私は、友人の...
田んぼが染まる頃

序章 田んぼが何色にも染まっていなかったとき

おかしいな……。何がくだらなくて私は立っているんだろう。何が見たくてここにいるんだろう。  歓喜に満ちた声や、うれしさのあまり泣き出す少年少女を、私はただぼやける視界の中から見つめていた。 いったい、私は何を間違ったのだろう。 もう……、そ...