プロローグ
神さま。これは罰ですか。
神に似せて土より造られたアダムとイブが蛇と化けた悪魔リリスにそそのかされて、禁断の知恵の果実を貪り、楽園より追放されたのと同じく――――
アダムとイブの息子の内、兄のカインが弟のアベルに嫉妬し、殺してしまい、罰を受け続けなければならなかったのと同じように――――
私も罰を受けねばならないのですか。
かの教えには、神との十の約束があるといいます。
けれど、ある人は言いました。
それは約束でしかないのだと。
それが誰だったのか今では私は思い出すことが出来ません。
その人はこう言いました。
人には、何があっても絶対に犯してはならない罪が二つだけあると。
その内、どちらかでも犯せば決して神に許されることはないと。
1つは自分を傷つけること。
もう1つは自分の手で自らの命を断つこと。
私がそれを犯したからですか。
だから、私は罰を受けねばならないのですか――――
風が強く吹く。
そう嘆く彼女を戒めるように、現実を知らしめるように金の髪は闇夜に舞い、純白の翼は神々しく輝く。
なぜ、私だけがこんな目にあわなければならないのですか。
ねぇ、神さま。
こたえてよ…………。
彼女の目から冷たいものが流れる。
けれど、こたえてくれるものの声はなく、その闇夜が終わるまで、彼女は金の輝きを放ち続けることしか出来なかった。
天使を信仰し、天使によって栄えた、ここ、天坂町で。
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